第2章 国庫補助金等特別積立金について

(1)国庫補助金等特別積立金の意義

固定資産の取得に充てられるための国庫補助金等は、その取得した固定資産の償却期間にわたって減価償却費を軽減させる効果があります。

その償却期間に対応させるための技術的な繰延科目として「国庫補助金等特別積立金」を積み立てることにしました。

具体例で説明します。

●車輌運搬具   購入価額 1,500,000円
            補助金額 1,000,000円
            耐用年数      5年


【資金収支計算書】では、図のような収支イメージになります。

<資金収支計算書>
車輌運搬具取得支出 1,500,000 施設整備等補助金収入 1,000,000

純額では、△500,000円の収支になります。

それに対し、国庫補助金等特別積立金を考慮しない場合の【事業活動計算書】では、図のような損益イメージになってしまいます。

<事業活動計算書>
施設整備等補助金収益 1,000,000
減価償却費 300,000

収益(補助金)は一括で計上され、費用(減価償却費)は耐用年数に配分された状態です。このようにバランスを欠いたことにより、取得年度に700,000円の利益が出た結果になってしまいます。

これでは不合理ですから、国庫補助金等特別積立金の登場になります。

収益に見合う額をすべて積立額としていったん費用化し、減価償却費相当額だけを取崩して収益(実際は、費用のマイナス)とすることにしました。


【事業活動計算書】では、図のような損益イメージになります。

<事業活動計算書>
国庫補助金等特別積立金
      積立額
1,000,000 施設整備等補助金収益 1,000,000
減価償却費 300,000 国庫補助金等特別積立金
      取崩額
200,000

これで、取得年度の費用負担額は、100,000円になり損益のバランスが取れました。


ちなみに、次年度以降は、下図のようになります。

<事業活動計算書>
減価償却費 300,000 国庫補助金等特別積立金
      取崩額
200,000

毎年度の費用負担額は、同額の100,000円になります。

(2)対象となる補助金等について

国庫補助金等がある場合、国庫補助金等特別積立金を積み立てる必要性は理解していただけたと思います。

この基本的な考え方については「新基準」でも変わっていません。

しかし、実務的には、以下のような点が変更又は明確にされました。



@対象とする補助金の範囲について

@民間公益補助事業の助成金等の明記

国及び地方公共団体からの補助金等だけでなく、民間公益補助事業(日本財団、日本自転車振興会等)の助成金等、共同募金会からの受益者指定寄附金以外の配分金も対象とすることが明記されました。

これは、従来から対象であり変わったわけではありませんが、明確にされたものです。

A償還補助分も対象に

従来の会計基準では、取得時の国庫補助金等だけを積立ての対象にしていました。

「新基準」では、取得時の補助金だけではなく、設備資金借入金で取得し、その償還金が補助される場合も同様の効果があると考え、対象範囲に含めることにしました。(なお、指導指針では従来からその考え方でしたから、整合性が取れたことになります。)

なお、従来からの取得時の国庫補助金等特別積立金を整備時分と言い、「新基準」から適用の設備資金借入金の返済のための国庫補助金等特別積立金を償還補助分と言います。

A対象資産の範囲について

従来から、国庫補助金等で固定資産を取得した時には、「国庫補助金等特別積立金」を積立てました。

「新基準」では、固定資産の取得に限定しないで、消耗品等にも対象範囲が拡大しました。


内容について詳しくは、 Q4.5.5.3 国庫補助金等特別積立金の計上額に変更はありますか?をご覧ください。

(3)積立てについて

固定資産等を取得するために受領した国庫補助金等を積立てます。

@整備時分

固定資産等の支出のために交付される国庫補助金等を、国庫補助金等特別積立金に計上します。

A償還補助分

設備資金借入金の返済時に合わせて交付される国庫補助金等で、当初から予定されていて実質的には固定資産等の支出のために交付される国庫補助金等に相当するものを、受領した時に国庫補助金等特別積立金に計上します。

要するに、償還のための補助金等が実際に交付されたら、その時点で積立金に計上するということです。

(4)取崩しについて

@経常的な取崩し

取崩額の計算方法の基本的な考え方については変わっていません。

先に記載したように、国庫補助金等特別積立金は、コスト(減価償却費)を軽減するために積み立てられたものですから、減価償却費に相当する金額を取崩します。

具体的な計算式は以下のとおりです。

国庫補助金等特別積立金取崩額=国庫補助金等特別積立金(※)×減価償却費÷取得原価


なお、※の金額は、整備時分だけでなく償還補助分も含みます。

償還補助分については、借入金償還のために予定されている補助金の総額を当初に見積もり、それをベースに規則的に取崩していくことになります。

すなわち、積立ては補助金受領の都度計上し、取崩しは最初から全額を予定して計算することになります。


詳しくは、

 Q4.5.5.4 国庫補助金等特別積立金の取崩しはなぜ必要ですか?

 Q4.5.5.5 国庫補助金等特別積立金取崩額は、どのように計算したらいいですか?

 Q4.5.5.6 国庫補助金等特別積立金取崩額の計算方法の変更はありましたか?

をご覧ください。

A積立て 即 取崩し?

(2)対象となる補助金等についてAで、積立対象が固定資産だけでなく消耗品等にも拡大されたと書きました。

固定資産の減価償却費を軽減させる目的の積立金なのに、減価償却費がない消耗品等に積み立てるのはおかしいのではという疑問が生じます。

しかし、別の観点からは、施設整備等の補助金と積立額の金額が異なるのも整合性に欠けることになります。

そこで、両方を満足させるように、一旦補助金等の全額(消耗品等も含んだ額)を積み立てて、固定資産でないものについての積立金は即取崩そうということにしました。


詳しくは、 Q4.5.5.8.4 固定資産に計上しない補助金対象物品について、一旦国庫補助金等特別積立金を積立て、同じ年度に取り崩す必要がありますか?をご覧ください。

考え方としては、すっきりしたと思います。

B臨時的な取崩し

こちらも従来と変わっていません。

積立の対象となった固定資産を廃棄又は売却した場合には、国庫補助金等特別積立金の残額をすべて取崩します。

(5)事業活動計算書の表示方法

@積立て

従来と変わっていません。

「国庫補助金等特別積立金積立額」は、「事業活動計算書」の「特別増減の部・費用」に表示します。

もちろん、対応する施設整備等補助金収益は、「事業活動計算書」の「特別増減の部・収益」に表示します。

いずれも臨時的な損益で、バランスしています。

A経常的な取崩し

「国庫補助金等特別積立金取崩額」は、「旧基準」では、「事業活動収支計算書」の「事業活動収支の部・収入」に表示していました。

「新基準」では、「事業活動計算書」の「サービス活動増減の部・費用」の減価償却費の次にマイナスで表示することとになりました。

減価償却費を軽減させるという意味合いを明確にしたことが理由です。


こちら

 Q4.5.5.7 国庫補助金等特別積立金取崩額の表示方法はどのように変更されましたか?


 Q4.5.5.7.1 なぜ表示方法が変更されたのですか?

もご覧ください。

B臨時的な取崩し

「旧基準」では、「事業活動収支計算書」の「特別収支の部・収入」に表示していました。

「新基準」では、「事業活動計算書」の「特別増減の部・費用」の固定資産売却損・処分損の次にマイナスで表示することになりました。