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社会福祉法人の会計基準 HPセミナー 総論編 第5回

前回に引き続き公益法人会計基準を参考に導入予定の新しい会計手法について説明します。

●退職給付会計

出現頻度 ★★★   難易度 ★

職員数が300人以上の大法人は、「退職給付会計」の対象となるケースがあります。それ以外の法人は会計的には「退職給付会計」ではなく、「退職共済制度の会計処理」を明確にしたものと考えられる内容です。

【内容】

大法人に限られる厳密な意味での「退職給付会計」の説明は省略します。

退職共済制度の会計処理について、3通りのいずれも認められました。

@退職給付引当資産(従来の退職共済預け金)は掛金累計額、退職給付引当金(従来の退職給与引当金)は期末要支給額でそれぞれの額を計上する方法
A退職給付引当資産、退職給付引当金ともに期末要支給額を計上する方法
B退職給付引当資産、退職給付引当金ともに掛金累計額を計上する方法

今までは、@またはBが多いと思いますが、Bが簡単でよいと思います。

●減損会計

出現頻度 ★     難易度 ★

減損会計は選択適用が認められましたが、実務上対象は少なく実施は困難ですから適用しなくてよいでしょう。
減損会計ではありませんが、準ずるものとして「旧会計基準」にもある資産の強制評価損がありますので、それについて説明します。

【内容】

従来からの規定です。

資産の時価が取得価額の半分以下になり、回復の見込はないと判断した場合、その資産は時価で評価し評価損を計上します。
有価証券、固定資産に該当するものがあるかもしれませんので、確認が必要です。

●税効果会計

出現頻度 ★     難易度 ★★★

収益事業を行っていて、法人税の確定申告を行っている(納税額がある)法人のみが対象です。
通常は納税額が少なく重要性が低いでしょうから、その場合は採用しないことができます。

【内容】

税額の計算は、事業活動の当期増減差額(もちろん収益事業だけです。)に法人税法固有の調整をして算出した所得に税率を掛けて導きます。
その調整とは、例えば、「税金計算上は当年度の経費ではなく次年度以降の経費としか認められないようなものは、当期増減差額に加算する。」といったケースがあります。
その調整があった場合、当期増減差額と納付税金は対応しなくなってしまいます。
これを対応させるために、納税額の一部は次年度以降の分だから資産等に振り替えるべきとの考え方が生まれました。これが「税効果会計」と言う手法です。

税効果会計を処理する科目として、貸借対照表に「繰延税金資産」「繰延税金負債」、事業活動計算書に「法人税等調整額」が新設されました。

●印象

新しい会計手法の導入については、厚生労働省も簡便的な取扱い方法を可能にする方向ですから、採用するのは限定的なケースになりそうです。

そもそも公益法人会計基準に採用されている会計手法を導入と説明されていますが、これらは経営効率を追及する企業会計において先行して積極的に採用されてきているものです。社会福祉法人にも同様の会計手法を導入するのは適切ではないもしくは時期尚早な項目が多いと思います。